まついのりこさんからの平和メッセージ

まついのりこさんが「日本児童文学」2008年1・2月号の“わたしと日本憲法”特集に載せた文章のコピーと絵はがきを送ってくださいました。そこでこのホームページに載せさせていただこうと許諾をうかがう手紙をお出ししたところ、快諾と共に、一冊の著作を送っていただきました。その本『あの日の空の青を』(まついのりこ・著 松井エイコ・絵 童心社)も紹介させていただきます。まついさんが、様々な雑誌などに書かれたものがまとめられています。

わたしと日本国憲法  まついのりこ

『日本国憲法』は私の“いのち”です。「第9条」戦争の放棄は“いのち”の根元。「前文」は、人類普遍の原理と理想を熱い血潮として、私を燃えたたせます。基本的人権を謳いあげる「第11条」は、生きることの土台です。平等を高く掲げる「第14条」「第24条」は、女性という性を担う私に、一人の人間としての勇気を渡し続けてくれました。そして、「第19条」の“思想及び良心の自由は、これを侵してはならない”は、私に深く呼吸の出来る宇宙をもたらしてくれたのです。『日本国憲法』の中には、私に“いのち”をつくってくれている条文がまだたくさんあります。これらの条文は羅列されているものでなく、有機的に関連しあい“いのち”を深く輝かせてくれているのです。

 私の父は経済学者でした。あの戦争の時、父は日本がおこした戦争の欺瞞と偽りを学問として説き続けました。私が10歳の時父は治安維持法で逮捕され牢獄にとじこめられました。敗戦で解放されましたが、一年七月の牢獄での苛酷な日々が父の身体をむしばみ49歳でこの世を去りました。父は「明治憲法」下、日本がファシズムに覆われていったあの時代、のちに『日本国憲法』の核となる人類の理想を追究し、自分の生きる道として貫いたのです。私は幼い時から家庭の日常の中で、父に一人の価値ある人間として育ててもらいました。それは、『日本国憲法』という“いのち”の双葉を、あの暗雲の中で育んでくれたことでした。

 一九四六年、『日本国憲法』誕生。私は、うれしかった! 父が育んでくれたものが、くっきり姿を現し“いのち”そのものになる日がきたのです。

 やがて私は二人の娘の母親になりました。娘が小さい時から私の家族は憲法記念日の朝、自分の心に響く憲法の条文を声に出して読みあいました。毎年私が必ず読む条文があります。「第97条」です。ここには日本国憲法の真髄が“人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ”と刻まれています。私はこれから生きていく若い人々が『日本国憲法』が、「人類の宝」としてあることを、この条文から深く汲みとってほしいのです。そして私自身、真の未来をつくるために、熱き心と誇りをもって『日本国憲法』を守りぬきその光を高く掲げていくことを誓うのです。

 

 

注)「日本児童文学」に載った文章は縦書きでしたが、ホームページ掲載の都合で横書きにさせていただきました。また、絵はがきと本の縮小率も同じではありません。