「かえしておくれ!」

JAグループ 家の光童話賞優秀賞

雑誌「家の光」2018年3月号掲載

絵・マスリラ

 

 

 あるなつのひ、ケイくんはひとり、にわで 

あそんでいました。でも、むしむし、むしあつくて、

ちょっと ふきげんでした。

 そこへ、おかあさんのこえがしました。

「もうすぐ おひるごはんよ。タマゴは 

めだまやきとゆでタマゴ、どっちがいい?」

「えー、タマゴ? ボクいまたべたくない!」

 ケイくんは、おおきなこえでこたえました。

 すると、とつぜん、

 

 

 

 コッコッ コッコッコッコッ

  と、なくこえがして、にわのとびらのしたから、

ニワトリが一わ、二わ、三わ、キョロキョロしながら 

はいってきました。

「おおきなこえで タマゴをたべたくないっていったのは きみかい?」

「そ、そうだけど」

 ケイくんがこたえると、ニワトリたちは、むねをはり、こえをそろえていいました。

「かえしておくれ! コケッコォ、タマゴをたべたくないんだったら、わたしたちにかえしておくれ!」

 ケイくんはびっくり、めをまんまるにしました。

 そこへまた おかあさんのこえがしました。

「それならハチミツは、パンにぬっていい?」

 すぐに、ケイくん、ふりむいていいました。

「ハチミツ? うーん、ハチミツもいらない」

 すると、

 

 

 

 ウーン、ブーン

 というおとがだんだんちかづいてきて……。

 一、二、三、四……、十ぴきのミツバチが つぎつぎ

かきねをこえ、はいってきたのです。

 ハチたちは、ケイくんのまわりを グルグルグルグル まわりはじめ、

「あまーいハチミツがいらいなら、かえしておくれ。

ボクらみんなであつめたんだから!」

 ケイくんは あたまをかかえて ちいちゃくなって

しまいました。

 けれど、また おかあさんのこえ。

「それじゃ、ぎゅうにゅうはのみなさいよ!」

 ケイくんは あわてて、こたえました。

「きょうは、ぎゅうにゅうものみたくなーい」

 すると、

 ドッドッ ドッドッドッドッ 

 すごいじひびきがして、バターン、にわのとびらが

いきおいよくあき、

 

 

 

 

 おおきなウシが かおをだしたのです。

 ウシはノッシノッシ、にわにはいってきて、

「かえしておくれ! ぎゅうにゅうをのみたくない

なんて、モーゆるせない。わたしに ぎゅうにゅうを 

かえしておくれ!」

 ケイくんは おもわず しりもちをついてしまい、

おおごえでよびました。

「おかあさーん、おかあさーん」

「どうしたの?」

 かおをだした おかあさんも しりもちをつきそう

なくらい びっくりしました。

 

 

 

 ニワトリとハチとウシは こえをそろえていいました。

「タマゴとハチミツとぎゅうにゅうを、ケイくんが

たべないのなら、わたしたちにかえしてください!」

 さあ、こまった、おかあさん。うでぐみをして、

かんがえだしました。

 でも、ポンッと てをたたくと、

「そうだわ!」

 いそいで、キッチンにもどっていきました。  

 ニワトリとハチとウシが まどのそとからのぞくと……

 

 

 

 おかあさんは タマゴとハチミツとぎゅうにゅうを、

こむぎこのはいったうつわにいれて、よくかきまぜはじめました。それから、フライパンにながしこんで、やいて、ポイッとひっくりかえし、できあがったのは……。

 ホットケーキ!

 いっしょに、ミルクセーキもつくってくれました。 

 ケイくんは ハチミツをたっぷりかけてもらい、いそいでたべはじめました。

 そのおいしいこと!

「とってもとっても、おいしいや!」

 ケイくんが えがおでいうと、ニワトリとハチとウシも、

ニコニコしはじめ、

「コケッコケッ、よかった!」

「ケイくんがおいしければ、モーもんだいなし!」

 

 

「ウーン、ぼくたちもなんだか おなかへってきたね。

かえろうか?」

「そうしよう、そうしよう、さよならー、おじゃま

しました!」

 みんな、つぎつぎと にわからでていきました。

 でも、ケイくんは おおきなこえできいたんですよ!

「あれーっ? みんな、もってかえらないのー?」

 すると、かきねのそとから、ミツバチとウシとニワトリのこえが かえってきました。

 ウーン、モーウ、ケッコウ!