絵本の読み聞かせQ&A

このページは、当児童図書ミニ・データ館にお問い合わせのあった質問にお答えしたもの、図書館の仕事をしていた頃に聞かれたことなどにお答えしたものを、当館館主がまとめたものです。質問者の個人名など、全て削除してありますが、問い合わせなどありましたら、どうぞメールしてください。

 

お問合せ1

問1

 子どもに絵本を読んであげるのですが、いつも最後までいかないのです。終わりそうになると、次の絵本を取りに行ってしまいます。次の絵本でもまた同じです。うちの子は落ち着きがないのでしょうか? 絵本を楽しめないのでしょうか?

お答え

 

 子どもたちは絵本を読んでもらうことが大好きです。それは絵本がおもしろいからですが、もうひとつ忘れてならないことがあります。それは、お子さんが小さければ小さいほど言えることですが、お父さんお母さんが自分のために読んでくれる、自分を膝の上に抱いて一緒に時間を過ごしてくれる、その喜びなのです。そうして時間を過ごすうちに、だんだん絵本自体を楽しむようになります。比重がだんだん絵本自体のおもしろさに移って行くのです。

 さて、今回の質問のお子さんの場合はどうでしょうか?

 もうお判りかと思いますが、絵本が最後に近づく、終わりそうになるということは、お母さんとのすてきな時間が終わりに近づくように思えるのです。だから、次の絵本を取りに行ってしまうのです。次の絵本が始まれば、またすてきな時間は続くからです。おそらく、お子さんはまだ、絵本自体を楽しむより、お母さんと一緒の時間を過ごすことの方が楽しい、うれしい比重が大きいのでしょう。お母さん、心配しないで、絵本を読んでください。でも例えば、夜寝る前などに、まず「今日はこの三册、読むね!」と絵本をまず複数用意して読み初めてはいかがでしょうか? 心配がなくなれば、落ち着いて聞き始めてくれるでしょう。そうすれば、誰が読むより一番絵本の中に飛び込めるはずですから。

 お母さん,お父さん、おばあちゃん、おじいちゃん、保育園の先生,学校の先生、そしてよく行く図書館の人、大好きな人たちが読んでくれること、そのこと自体が、絵本の大きな喜びなのです。また、それが絵本を楽しむようになる一番の方法なのです。

 

 

 

お問合せ2

問2

 今年の9月に念願の赤ちゃんが産まれる予定です。胎教とその後の遊び、勉強にとディズニーの英語システムを考えていますが、その他、何かお勧めのものがあったら教えてください。

 

お答え

 ○○さん、メールありがとうございます。とても大切なことをおたずねくださいまして、ちょっと責任を感じます。私の考えるところを、メールさせていただきます。

 まず、お子さんがお生まれになるとのこと、本当におめでとうございます。「念願の」と書いていらっしゃいますが、私も子供が生まれた時にとてもうれしくて、そのことを、子どもの本の評論などを書いていらっしゃる方に話したら、次のようなことを話してくれました。子どもが生まれてきた時の親の気持ちが、その子の未来を大きく左右する、と。「子供が生まれるのを待ちに待っていて、生まれた時に親がとても喜んでいる。そのことが、生まれてきた子の未来に大きくプラスに働く」と言うのです。ですから、○○さんのお子さんは、とてもよいスタートを切られると思いました。

 さて、子供が生まれて(胎教の時からと言って良いかも知れませんが)一番大切なものはなんだと思いますか? 当たり前と言われたら何にもなりませんが、私は、親だと思います。親が抱いて、いろいろ言葉をかける。これに勝るものはありません。他のものに頼る必要はないと言っても良いぐらいだと思います。お母さん、お父さん(お父さんもとても重要です)がいつもそばにいて、自分のことを愛してくれる。その安心感、満足感をたくさん味わわせてあげて下さい。生まれてきたことは、幸せなことだ、いいもんだなあ、とお子さんに感じさせて下さい。

 テレビの「生きもの地球紀行」などのナレーターをしている柳生博さんは、柳生十兵衛などで有名な柳生家の末裔で、名家らしく色々家訓があったそうです。その中に、「三歳までは、親子“川”の字になって寝よ!」 つまり、子供を両親の真中に、不安がないようにして寝かせなさい、という事です。自分の子どもの頃、また私の子どもたちを見ても、子どもというのは大変不安なものだというのが、よく分かります。「強く!」と言う前に、しっかり抱いてあげることが重要だ、とこの家訓は言っているのだと思います。三才くらいまでは両親と、むしろべったりでも良いくらいだと、私も思っています。親の愛情をいっぱい受けていないと自立もできない、とよく言われます。心が育つ前に「強く」ばかり言われたら、子どもたちは乱暴になるしかありませんね。

  ちなみに、柳生家家訓にはこういうのもあるそうです。「16才になったら、一ケ月間、一人で旅に出せ」 お金はいくらかもらうのだそうですが、まったく知らない所へ行って、一ケ月間生活してこなければならないと言うのです。柳生博さんもやったと講演で話されていましたが、その年齢その年齢で、どうしたことをしなければならないか、よく示していると思います。

 余談が長くなりましたが、さて、8か月から一才くらいになると、もう絵本に関心を持つようになります。その時も重要なのは、お母さんとお父さんです。膝の上に抱いて、ご自分の声で絵本を読んであげて下さい。絵本の良さは、お母さんとお父さんが語りかける形で、読めることです。ただ、その時注意していただきたいのは、優れた絵本を選んでいただきたいということです。子どものことを考えるとき、大人には二つのタイプの人がいます。「子供のことだから、適当にやればいい」と考える人と、「子供のことだからかこそ、より力を入れて」と考える人です。出版社でもその違いがあります。優れた文章・優れた絵の絵本を選んで下さい。「子供の本だからこそ、おざなりにせず」と考える出版社の本を選んで下さい。そうすれば、選びぬかれた言葉と絵の絵本が、大好きなお母さん・お父さんの声で、お子さんの心に届くことでしょう。

 ただし、お金をかける必要はありません。図書館に行って、借リればいいのです。そうした中で、お子さんが何回も何回も借りたがる、読みたがる本を買えばいいのです。三才までは、知識よりも“心”を育てるようにされたほうがいいと思います。それも、お金をかけず、お母さん・お父さんの手でできるはずです。お母さん・お父さんが、愛情を持って子供に接するのが、何をおいても一番だということを忘れないで下さい。そして、そのことが「子供たちの荒れ・崩れ」を言われる現代において、何よりも大切だと思います。

 長くなってきました。最後にもう一つ、つけ加えさせていただければ、お父さん・お母さんが子育てを楽しんでいただきたいということです。3才までの子供は、両親を信頼しきって、べったりです。おそらく、人間、これほど信頼されることは、生涯ないでしょう。それは大人にとっても、心癒される時です。また「子供は三才までに親孝行の全てをしてしまう」と言った人がいます。少し象徴的に言ったのだと思いますが、つまり、三才まではとてもかわいいし、親もとても満足する豊かな時間ということです。大げさな言い方になりますが、この時期のつながりが、その後の親子関係に大きく影響すると言っても良いと思います。特にお父さん、この時期に残業で子供と十分に時間を作れないことは、親にとっても悲劇でしょう。四才以降をなおざりにして良いということでは決してありませんが、この時期、子供との楽しい時間をを大いに楽しんで下さい。

 大変長くなりました。最近、心が育たないうちに、または心を育てないで、知識(早期教育など)や「しつけ」ばかりを考えるお母さん・お父さんが多いように思います。子供達の最近の問題の多くは、そこにも原因があるのではないでしょうか。色々書かせていただきました。参考にしていただければ幸いです。でも、本当はまだ書きたいことはたくさんあるのです。赤ちゃんの発育過程や健康も配慮しながら、たくさん自然にふれさせて欲しいこと。また、例えば、ディズニーの評価のことなど。テレビなどにはほとんど出ませんが、ディズニーを批判している人たちもたくさんいるのですよ。しかし、長くなりますので、今回はこの辺で、失礼いたします。

  元気なお子さんが生まれますように!