堺利彦『櫻の國地震の國』。黒岩涙香『噫無情』のことを書いたら、やっぱり、この本のことも書きたくなりました。この本も『噫無情』を教えてくれた友人の推薦でした。昭和3(1928)年に小学館から出版された「現代ユウモア全集」の第二巻です。
夏目漱石や坪内逍遥らと共に、ユーモリストとして評価が高く、ついには「日本一のユーモリスト」と呼ばれた堺利彦は、よく知られていますように、優れた社会主義者だったようです。
この本のなかで、紹介してくれた友人との間で一番の話題になったのは、「結婚とは何をする事か」(P274)という大正8年の一文です。
内容は、堺利彦のところへ、まだ結婚をしていない三人の青年が集まって、「結婚とは、また結婚式とは何をする事か」を話し出します。後日、今度は、結婚している三人の男が集まり「どんな結婚式をやったか」が話し合われます。それら話が行き着いたところは、結局「結婚とは友人に葉書を出す事なり」というところに至ります。
私は、この話がとても面白いと思い、また別の友人に紹介しました。すると、その友人は、私よりもさらに気に入って、その文章だけで一冊の豆本を作って、何人にも配っていました。それが画像の小さい方、『披露の通知』(とりゆみ舎 1977年)です。タイトルは「結局のところ、結婚式の最大最重不可缼の要素は、交際間に披露の通知をすると云う事なんだ」から来ているようです。
とても面白いので、ぜひ多くの方に読んでもらいたいと思い探したのですが、戦後出版されたものは、この豆本しかないようです。