松居直さんの評論は、やはり、絵本についてのものが多いようです。本棚にあったものを並べてみます。
『絵本とは何か』『絵本をみる眼』『絵本を読む』『絵本の現在 子どもの未来』『絵本の森へ』(以上、日本エディタースクール出版局・刊)『わたしの絵本』(国土社)『絵本の時代に』(大和書房)『子どもの本・ことばといのち』(日本基督教団出版部)
その他に「絵本編集者の眼ーーエッツ『もりのなか』を読む」という約75頁の冊子が一冊、私の本棚にあります。これは、川崎市生涯学習振興事業団というところが発行(2002年)した「かわさき市民アカデミー講座ブック」の一冊です。これは他のに比べあまり知られていないかもしれません。松居さんは、そこで連続10回の講座を持たれました。それを基にまとめられたものです。
内容は、エッツの『もりのなか』への分析から始まって、作者マリー・ホール・エッツのこと。『わたしとあそんで』『海のおばけオーリー』などの作品について。また「編集なくして 出版なし」の言葉通り、絵本の編集者について書かれています。有名な編集者、メイ・マッシーやペール・カストールその他の方のこと。そして何より、子どもについて。薄い冊子ですが、読み応えある本です。
文中、松居さんは「(エッツは)九〇歳まで生きて、こんなに素晴らしい絵本を残すことが出来た。少しは真似をしなきゃ、という気持ちになります。九〇歳まで生きられるかどうかは、わかりませんが、エッツも生きたんだから、生きなければ、という気持ちです」と話していらっしゃいます。松居直さんは、96歳でした。とても多くのものを残されたと思います。