松居直さんが亡くなられました。
本棚にある、松居さんの評論の本を引っ張り出したら8冊ありました。その書名を書いてもいいのですが、やはりこの絵本だろうと思って、私と『だいくとおにろく』のことをまず書かせていただきます。
市立図書館員になって初めて絵本の読み聞かせをしたのが、この『だいくとおにろく』でした。まだ大人の本の担当だった頃です。大人の本の担当者も絵本の読み聞かせをしてください、と言われ読むことになりました。何度も練習して、当日、子どもたちに読み終わってお話の部屋から出たら、急にお腹が痛くなって、1時間半休憩室で寝ていました。極度の緊張からくる胃痙攣でした。
その後、どうしても児童書の担当になりたかったのですが、私が勤めていた図書館の児童担当は、お話を語らなければなりませんでした。昔話などを覚えて、絵本など見ないで子どもたちに語るのです。悩みに悩んで、児童担当になりました。
いろいろなお話を覚え語りました。中でも一番語ったのが、やはり、松居さん再話の『だいくとおにろく』でした。お話仲間の前で、何度もうまく語れるように練習しました。子どもたちの前でこのお話を何回語ったでしょう。小学校の教室に語りに行ったことも何十回もあります。お話の後半、どっと子どもたちが笑ってくれたことが思い出されます。図書館を退職してからも、このお話だけは口から出てきます。頭の中にしっかり残っているのです。
松居さんは、この絵本のタイトルを「だいくとおに」にすればよかったというようなことをどこかで言ってらしたので、私は子どもたちに語る時「次のお話は『だいくとおに』です」と言って語り始めました。
ご冥福を心からお祈りいたします。