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『レ・ミゼラブル』コゼットの挿絵

 

『レ・ミゼラブル』が『噫無情』の名で、日本に紹介されたのは、1902(明治35)年、黒岩涙香の翻訳というか、翻案によってのようです。大評判になって重版を重ねたようです。

手元にある『縮刷涙香集第三編 噫無情』(明文舘書店 大正4年初版)は、昭和2年165刷のものです。新書版サイズで、632頁の厚さ。友人と神田古書センターに行った時「これ面白いよ」と薦められました。「えっ、こんな古い本?」と思ったのですが、パラパラと見ていったら、口絵にあったのが、このホウキを持ったコゼットの絵でした。「これなら買ってもいい」と思いました。

古い印刷、旧漢字、びっしりと総ルビ、独特の語り口、しかし、意外と読みやすく、とても面白く読みました。ちょうど、就職活動をしていた頃で、ある試験会場で出された問題が「あなたが読んだ一冊の本」について800字で書きなさいというものでした。私は、この『噫無情』について書き、一次試験を通り、結局合格できたのでした。

その後、全2巻の福音館古典童話シリーズで『レ・ミゼラブル』を読みました。その上巻の表紙が、このホウキを持ったコゼットの精密な絵でした。しかし、私には、黒岩涙香の『噫無情』のコゼットの挿絵の方が、印刷は未熟ですが、印象に残っています。

(それにしても「レ・ミゼラブル」が「みじめな人々」という意味だと、福音館版の解説で知りました。また、数年前、アメリカのミュージカル映画『レ・ミゼラブル』を見に行きました。高々と歌い上げるシーンが続くのに耐えきれず、途中で出てきてしまいました。新聞販売店の招待で無料でもあったので・・・)