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『子供時代』リュドミラ・ウリツカヤ

子どもの本のことをやっているというので、友人のお嬢さんが薦めてくださったのがこの本。沼田恭子訳 新潮社 2015刊です。

別の友人が、人に薦められた本を読むっていうのは大切だよなと言っていたことがありますが、私は、勉強会や読書会以外の本は、薦められた本をあまり読んでこなかったように思います。欠点の一つだと思いますが、よく、自分は読書下手だなあと思うことがあります。それは、まさにこの本のタイトルのように子供時代に、そう、一桁の年齢の頃にお話を読んでもらわなかった、物語を楽しいとあまり思わなかったからではないだろうかと思っています。

今回も時間がかかってしまいました。七編の短編集だったので助かりましたが、少し横に置いたりして、ようやく読み終わりました。とにかく、自分で選んでいたら決して読まなかっただろうと思う本でした。

お話は、世界大戦後のスターリン時代のモスクワ。おそらく集合住宅だろうと思われるところに住む人々、特に子供たちのが主人公です。最初の「キャベツ」も、最後の「折り紙の勝利」も良かったんですが、「釘」が一番気に入りました。

ある年の夏、妹が生まれるというので、セリョージャは田舎の親戚に預けられます。しかし、田舎の子供たちと馴染めない彼は、納屋で一人、敷居に釘を打ったりしています。すると、ひいおじいちゃんが立っていて、釘の打ち方を教えてくれますが、敷居が釘で一杯になると、今度は抜けと言われます。ようやく全部抜くと、曲がった釘を真っ直ぐにしろと。釘はとても大事なのでしょう、その後もひいおじいちゃんは、セリョージャの相手をしてくれて、最後には大きな木の箱を作ることを手伝わされます。そして、次の夏、セリョージャがまた田舎へ行くと・・・

どのお話も、人々の、そして子供たちの日常が淡々と、また、素敵な言葉で描かれています。現ロシアの作家の作品ですが、こんなお話を書きたいなと思わせる短編集でした。