モディリアニ『おさげ髪の少女』

「素晴らしい絵。この傑作は嬉しいことに日本にあり、よく知られ、愛されている。『おさげ髪の少女』、名古屋市美術館所蔵。ご存知でしょうが、何度見ても見飽きないから、また見てください」

高畑勲さんが、その著作『一枚の絵から(海外版)』(岩波書店 2009)の「モディリアニ おさげ髪の少女」の項の冒頭でこう書いています。当然、これは見に行かなければと思い、出かけました。

高畑さんがさらに書いています。「少女は何かを見ているのではなく、眼は内に向かって見開かれている。強いて言えば、この子が入っていかなければならない『この世界』そのものを、これからの人生を、大きな目で見つめている」「思春期にさしかかろうとする少女特有の不安定さ」

勝手な想像だが、少女はこの後、ジャック・プレヴェールの「愛しあう子どもたち」の世界に入っていくのだろう。そしてその後は? 少女の不安は「この世界」を少しは知っている私たちをちょっと心配な気持ちにさせます。

しかし、さらに高畑さんは書いています。「しげしげと『可憐な』少女の顔を見ていると(中略)この少女の健康な強さが意識されてきて、思春期直前の本性が『不安』だけでないこともまた実感させる」

つまり、少女が、私たち歳の行った者に「あなたにとって『この世界』はどうでしたか?」または「どうですか?」と正面から問いかけてくるように思えるのは、そのせいだろう。

それはそうとして、初めての名古屋旅行は、大好きな阪神タイガースが中日ドラゴンズに完敗したけれど、ひつまぶしも味噌トンカツも美味しかったし、大須の町もなんだか気に入りました。そしてなにより「おさげ髪の少女」はハイライトで、やはり、素晴らしい絵でした。画像は、美術館で額共で買ってきたもので、5.5畳の部屋に飾っているものです。