『パリからの旅』66頁に“パリ近郊名所案内”という堀内さんの描いた地図が載っています。その地図の左上(北西)のすみに、レザンドリー(les Andelys)とあり、“セーヌの眺めが最も良いとされている丘”と書いてあります。続く77頁にそのレザンドリーを描いた絵が載っています。
その絵を見て、「あれ? どこかで見た絵だ」と思いました。
そして思い当たりました。『こすずめのぼうけん』です。あの絵本に描かれた川と、その川に削り取られたのであろう段丘の見える風景。きっとそうだと思いました。
そこで、一人でパリに行った時、レザンドリーへ『こすずめのぼうけん』を持って行き、リチャード獅子心王が建てたガイヤール城跡がある丘に登って撮ったのが、この写真です。
『こずずめのぼうけん』の石垣などのある風景は、間違いなくイギリスの風景でしょう。今年(2022年)に出版された『堀内誠一 絵の世界』にも「自然豊かなコッツウォルズの風景を見事に描き出しています」と書かれています。それを否定する気持ちなどまったくありませんし、コッツウォルズや、その他イギリスにあの川のような風景があるかどうかも知りませんので断言するつもりはないのですが、私には、この絵本の川の絵は、きっとレザンドリーのイメージだったに違いないと思えます。
但し、当然、レザンドリーでなくてはいけないなどということはまったくなく、あの絵の元になったイメージがどこであろうと、『こすずめのぼうけん』は本当に素晴らしい絵本であることに間違いありません。ただ、私としては、堀内さんがイメージしたのが、レザンドリーであって欲しいなと思うばかりです。