イヴ・モンタンのCDに「愛し合う子供たち」という曲があります。
映画「天井桟敷の人々」やシャンソン「枯葉」でよく知られた、ジャック・プレヴェールの詩です。
要約しますと「愛し合う子どもたちが、夜の門にもたれてキスをしあっている。そばを通る大人たちの蔑みの声がするが、二人はちっとも気にしない。なぜなら、彼らは、夜よりもずっと遠く、昼よりもずっと高く、初恋の気が遠くなるようなまぶしさの中にいるのだから・・・」
プレヴェールは(また、この曲を歌っている多くの歌手たちは)愛し合う子どもたちを全面的に称賛し、讃えています。その視点がとてもいいと思います。
ところで、手元にこの詩の訳が三つあるのですが、微妙に違うのです。
岩波文庫版は「恋する二人が抱きあい」とあり、画像の飯塚書店版は「愛しあう子どもたちが抱きあって」。そして、モンタンのCDの対訳は「愛し合う子どもたちが口づけを交わしている」です。
原文を見ますと、les enfantsであり、embrasser。すなわち、辞書をひくと(子どもたち)(キスする)です。CDの対訳は直訳的ですが、めずらしく、この詩に関しては、対訳のようでなければいけないように思います。
高畑勲さんが、プレヴェールの詩集『Paroles』(ことばたち)を訳されているようです。「愛しあう子どもたち」は他の詩集ですから、訳していないでしょうが、高畑さんならどう訳しただろうか? とても気になります。